人形浄瑠璃の物語
曾根崎心中(そねざきしんじゅう)

人形浄瑠璃に“世話物”という新ジャンルを確立。
近松門左衛門作  元禄16年(1703)竹本座初演

天神森の段~美男美女が織りなすはかない恋物語~

(解説)
元禄16年4月7日(1703年5月22日)、実際に大阪で起きた心中事件を題材に、近松門左衛門が書き下ろした作品。
事件からわずか1ヶ月後に、竹本座で上演され、時代物しかなかった浄瑠璃の世界に、町人が主人公となる〝世話物〟というジャンルを築いた記念碑的な作品です。
大阪の醤油商、平野屋の手代・徳兵衛と、天満屋の遊女お初は愛しあっていました。しかし平野屋の主人は、徳兵衛を見込んで、娘と結婚させ跡取りにしたいと考えていました。徳兵衛は縁談を断るのですが、あきらめきれない主人は、徳兵衛の継母に支度金を握らせ(徳兵衛の両親はすでに亡くなっていた)、強引に縁談を進めようとします。徳兵衛はこの縁談をなかったことにしてもらおうと、継母から支度金を取り返し主人に返そうとしますが、途中で会った親友の九平次に3日間の約束で、その金を貸してしまいます。後日、徳兵衛は九平次にお金を返してもらいにいきますが、九平次は金を返さないどころか、「借金などしていない。証文も偽物だ」と徳兵衛を罵ののしり、喧嘩に持ち込みます。さらに、天満屋へ行き、お初の前で「徳兵衛の話は嘘八百だ」といいます。その話をお初の足下で隠れて聞いていた徳兵衛は、落胆し、お初の「一緒に心中する覚悟をききたい」という問いかけに同意するのでした。

生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)

司馬芝叟の長咄を歌舞伎化し、それをさらに浄瑠璃化したもの。
山田案山子作  天保3年(1832)大坂竹本木々太夫座初演

宿屋から大井川まで~愛し合う男女のすれ違い~

(解説)
「携帯の普及で男女の〝すれ違い〟が減ったから、面白い恋愛ドラマが作れない」と言われるほど、「会いたいのに会えない」というシナリオでヤキモキさせるのは、恋愛ドラマの定番です。『生写朝顔話』はジャンルとしては時代物で、本筋はお家騒動ですが、よく演じられる「宿屋から大井川まで」では、深雪と駒沢(宮城阿曽次郎)の〝すれ違い〟の恋愛模様が見どころとなっています。
『生写朝顔話』はジャンルとしては時代物で、本筋はお家騒動ですが、よく演じられる「宿屋から大井川まで」では、深雪と駒沢(宮城阿曽次郎)の〝すれ違い〟の恋愛模様が見どころとなっています。深雪の心は鷲掴みされます。しかし二人はすぐに別れなくてはならず、明石浦で再会するも、そこでもまた悲しい別れ方をします。しばらくして地元に帰った深雪に、縁談が持ち上がります。その相手は、意中の阿曽次郎だったのですが、「駒沢次郎左衛門」と改名していたため、深雪は気付かず結婚を拒みます。家出した深雪は駒沢(阿曽次郎)を慕って捜し歩きますが、なかなか会えません。募る思いと涙で盲目となり、島田(静岡県)の宿で門付芸人(琴奏者)となります。そこで駒沢が詠んだ朝顔の歌を琴の音にのせて披露し、自身も「朝顔」と呼ばれ、いつか駒沢に会えるかもしれないという淡い期待を胸に暮らしていました。

伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)

「八百屋お七」の浄瑠璃版。
菅専助らの合作 安永2年(1773)大坂北堀江氏の側芝居初演

火の見櫓の段~我が身をかえりみない一途な恋~

(解説)
恋人に会いたい一心で放火し、火刑となる『八百屋お七』。人形浄瑠璃版の八百屋お七は、放火ではなく火事を装って半鐘を叩くというシナリオですが、それだけでも死を覚悟しなければならない重罪です。「降り積もるのは雪ではなく、恋心〜」というお七の心情描写から始まる「火の見櫓の段」は、舞台中央に火の見櫓があり、雪がハラハラと舞い散る中、お七がそわそわしながら舞台の上を行ったり来たりします。
お七の恋人・吉三郎は、御上へ献上する「天あまくに国の剣」を紛失した責任で切腹となった父の後、100日間の猶予をもらい、剣を探していました。しかし、その期限も今日まで。 お七は店の再建のため、好きでもない万屋武兵衛と結婚することになっていたのですが、なんと吉三郎が探す剣を、この武兵衛が盗み持っていたことを知ります。そのことを吉三郎に知らせたいと、いてもたってもいられないお七。

絵本太功記(えほんたいこうき)

近松柳・近松湖水軒・近松千葉軒による合作。
寛政11年(1799)大坂豊竹座初演
光秀が秀吉に討たれるまでを一日一段構成で描いた時代物。全十三段。

尼崎の段~信念を貫いた悲劇の英雄・光秀~

(解説)
江戸時代、豊臣秀吉の人生を川角三郎右衛門がまとめた『太閤記』に、挿絵をつけた『絵本太閤記』が大評判となり、その人気に便乗して生まれたのが『絵本太功記』です。明智光秀を主人公に書かれたこの作品は、信長は「尾田春長」、秀吉は「真柴久吉」、光秀は「武智光秀」との名で登場します。
物語は光秀が謀反を起こした天正10年6月2日(本能寺の変)から、光秀が落命する13日までを一日一段で描かれていて、一番人気は十段目「尼ヶ崎の段」。浄瑠璃ファンの間では、『太功記』の十段目で〝太十〟と呼ばれています。

伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)

松貫四、高橋武兵衛、吉田角丸による合作。
天明5年(1785)江戸結城座初演
仙台藩伊達家のお家騒動をベースに書かれた時代物。全九段。

御殿の段、政岡忠義の段~悲しみをこらえる強い母の物語~

(解説)
右目の眼帯と三日月のカブトが印象的な戦国武将・伊達政宗。『伽羅先代萩』は、その伊達政宗の孫にあたる伊達綱宗にまつわる「伊達騒動」がベースとなっています。
19歳で第3代仙台藩主となった綱宗は、吉原の人気花魁に入れ込み、放蕩三昧。親族、家臣の進言も聞き入れず、結局21歳の時に幕府から隠居を命じられます。そんな綱宗の代わりに家督を継いだのは、まだ2歳の綱宗の長男・亀千代。『伽羅先代萩』では舞台を江戸から室町時代に置き換え、亀千代は鶴喜代に名を変えて描かれています。

恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたずな)

浄瑠璃が泣きの芸能であることを象徴する子別れ物
吉田冠子、三好松洛による合作 宝暦元年(1751)大坂竹本座初演。

重の井子別れの段~僕の話を聞いてよ、お母さん~

(解説)
『重の井子別れ』はタイトル通り、訳あって一緒に暮らせない母と子の話。
母・重の井と息子・三吉のやりとりが涙を誘います。一緒に暮らせない訳とは、果たして…。

出典 「じょうるり女子の見どころ指南」

関西広域連合「文化の道」実行委員会
〒602-8570 京都府京都市上京区下立売通新町西入藪ノ内町
京都府文化スポーツ部文化交流事業課内
TEL 075-414-4287  FAX 075-414-4223
人形浄瑠璃街道連絡協議会
〒656-0021 兵庫県洲本市塩屋2丁目4番5号
兵庫県淡路県民局県民交流室
TEL 0799-26-2043  FAX 0799-24-6934